皆さんご存知の「ドレミの歌」。
♪ドはドーナツのド~ レはレモンのレ~♪

1965年に公開された映画「サウンドオブミュージック The Sound of Music」に於いて、
ジュリー・アンドリュース扮するマリアが、トラップ一家の子供達に音楽の基礎(ドレミ)を教えるために唄っていたものですね。
この英語(原詞)は下のような歌詞となります。

Do-Re-Mi

Doe, a deer, a female deer
Ray, a drop of golden sun
Me, a name I call myself
Far, a long long way to run
Sew, a needle pulling thread
La, a note to follow sew
Tea, I drink with jam and bread
That will bring us back to do
(日本語訳 English-Japanese)

Doe はシカ、雌の鹿
Ray は黄金色の太陽の光
Me は私のこと
Far は長い距離走るのよ
Sew は針で糸を引くこと
La は So の次の音
Tea はジャムをぬったパンと一緒に飲むもの
そしてまた Do に戻るの

私たちが知っているものとは内容がかなり違っていますね。
これは1960年にブロードウェイにてミュージカル「サウンドオブミュージック」に感銘を受けた歌手のペギー葉山さんが、「こんな楽しい歌を日本の子ども達にも教えてあげたい」と現地のホテルへ直行し1番の訳詞を手がけ、日本に持ち帰りました。そして1961年にレコード発売、1962年にはNHK「みんなのうた」に採用されました。

そこにはこんなエピソードが残されているそうです。
「食べ物で統一しようと思いました。ドーナツとレモン、ミカンときたのですが、
ファが無く(登録商標のファンタしかなかった!)子ども達に勇気を与えるという気持ちでファイトにしたために、全体を食べ物という構想はなくなった(その際にミも「みんなのミ」に変更)」と云う逸話が残っています(読売新聞文化部『唱歌・童謡ものがたり』岩波書店 1999年)。
子供たちのために覚えやすい単語にしたのですね。

これは原詞で直前の歌詞を読むとその考え方がわかります。

Do-Re-Mi

Let's start at the very beginning
A very good place to start
When you read you begin with
A-B-C
When you sing you begin with do-re-mi
Do-re-mi
Do-re-mi
The first three notes just happen to be
Do-re-mi
Do-re-mi
Do-re-mi-fa-so-la-ti
Oh, let's see if I can make it easier
(日本語訳 English-Japanese)

さぁ 基礎から始めましょう
何かを始めるのに一番良いのは 最初から
(アルファベット)文字の始まりは
A-B-C
歌の始まりは ドレミ
ドレミ
ドレミ
三つの音符がこの音を作るの
ドレミ
ドレミ
ド - レ - ミ - ファ - ソ - ラ - シ……
ん~、もっと簡単な覚え方はないかしら??

子どもたちが音楽に慣れ親しみ音楽の基礎を教えるための歌ですから、原詞を直訳して「ドーは鹿!メスの鹿!」と唄っても、ちょっと馴染めませんよね。英語を理解していない大人にもさっぱりです。
そこでペギー葉山さんが「日本の子ども達が覚えやすいように!」と歌詞を新たに作ったのです。私達がよく知っているあの歌詞は、一種の替え歌なのですね。
常に「子ども達が楽しく歌えるように」と考えられていたペギーさん。その素晴らしい「替え歌」は子ども達の心にきちんと伝わり、今もなお「ドーはドーナツのドー♪」と子供達が楽しく歌っています。
ペギー葉山さんの「人に音楽を伝えようとする気持ち」…素晴らしいですね!


なお余談ですが、中国語 Chinese languageでは
Do是可愛的母鹿
Re是金色陽光
Me是対我自己的称呼......
ドは可愛い雌鹿
レは金色の太陽の光
ミは自分に対しての呼称......
と云うように英語ver.を忠実に直訳したものが唄われているそうです。
ちなみにこの映画「The Sound of Music」の中国語名は「音乐之声(音楽之声)」とのこと。

余談ついでにおまけ......⇒


ドレミファソラシドという階名は中世イタリアの音楽教師グイド・ダレッツォ Guido d'Arezzoが1025年頃に考案したと言われています。
カトリック教会賛歌の「聖ヨハネ賛歌」は6節それぞれの歌い出し音が一音ずつ上昇しています。

C音 - D音 - E音 - F音 - G音 - A音

グイド・ダレッツォはこれと各節の歌詞を利用して、各音に

ut - re - mi - fa - sol - la

と名付けることを発明しました。
後の17世紀頃に「si」が加えられ「ウトレミファソラシ」 となりました。これは現在のフランス語における7音名となっています。
しかし「ウト」が発音しづらいと云う事で「ut」 が 「do」 に変わり、今日のような「ドレミファソラシド」が成立したと言われています。これは現在のイタリア語における7音名となっています。日本でも固定ド音名として使われていますね。


さてドレミの歌。日本語版では「シ」にあたる部分の歌詞が、原曲では「Tea=ティー」になっています。何故なのでしょうか。 それは「トニックソルファ法」に則しているのです。

「トニックソルファ法(tonic sol-fa method)」とは何か。
それは19世紀にイギリスの音楽教師サラ・アンナ・グラヴァー Sarah Ann Gloverが創案し、ジョン・カーウェン John Curwenが完成させた音楽教育システムで、移動ドによるソルフェージュ(solfege 仏)、ソルミゼーション(solmization 英)の一種です。
音楽の習得を目的とする音名で、音階のそれぞれの音に1音節をあてはめて声による読譜・歌唱訓練を行います。
日本語で「階名唱法」と訳されていますが、「ドレミ式」というように訳した方が原語のニュアンスに近いでしょう。いわゆる「ソ=sol」「ファ=fa」「ミ=mi」から創られた単語なのです。

ジョン・カーウェンはこう語っています。
「トニックソルファ法の主な特徴は、音楽を音楽の記号から切り離すと云う事である。音楽は音からなるのであり、四分音符や八分音符からなるものではない。また階名の文字が音を産むものでもない。トニックソルファ法の教師が働きかけるべきなのは、生徒の耳と声であると考える。最初は全く記号を使わないで教え、そしてその後も生徒に既知のものを聞き分けさせたり、思い出させたりするのに必要とされる限りにおいてのみ、記号を少しづつ導入していく。これはペスタロッチの原則(実物教授)であり、ペスタロッチに従った全ての教育学者の原則である。」
(Bernarr Rainbow "Bernarr Rainbow on Music, John Curwen; a short critical biography", Borough Green, Novello, 1980, p18-19)


追い追いで追記していきます。興味を持たれた方は、東川清一氏著「退け、暗き影「固定ド」よ!―ソルミゼーション研究」音楽之友社 1983年「移動ドのすすめ―正しい読譜法と視唱指導」音楽之友社 1985年を一読されるのをお勧めしますが絶版っぽいのですよね…ブツブツブツ。

ちなみに「ドレミの歌」原詞も、基本的にトニックソルファ法における階名と発音が似た単語をこじつけてあるのです。

以下の表はトニックソルファ法のクロマティック音名を、日本語で用いる階名唱法、いわゆる「ドレミファソラシド」に適するように、私が改良したものです。
Scale degree Syllable Pronunciation
I Unison 完全一度
  Do  
dough
bII Minor second 短二度

ryo*1 リョ*1 ryo
#I Augmented unison 増一度   di  

ディ Dee
II Major second 長二度
Re
ray
bIII Minor third 短三度

May
#II Augmented second 増二度 rya*2

リャ*2 rya
III Major third 長三度
Mi
like the word me
bIV Diminished fourth 減四度

  fe   フェ
IV Perfect fourth 完全四度
Fa
ファ 'a' as in father
bV Diminished fifth 減五度

say
#IV Augmented fourth 増四度 fi

フィ like feet
V Perfect fifth 完全五度
So(l)
long 'o', like sold
bVI Minor sixth 短六度

lo*3 ロ*3 low
#V Augmented fifth 増五度 sa

sir
VI Major sixth 長六度
La
'a' as in large
bVII Minor seventh 短七度

Teten
#VI Augmented sixth 増六度 li

lean
VII Major seventh 長七度
Ti
シ*4 see*4
I Octave完全八度
Do
dough

*1 トニック・ソルファ法では"ra(ray)"だが、モーラ発音の問題の為、拗音変化させて「Ryo リョ」を用いる。
*2 トニック・ソルファ法では"re(rey)"だが、モーラ発音の問題の為、拗音変化させて「Rya リャ」を用いる。
*3 トニック・ソルファ法では"le(lay)"だが、モーラ発音の問題の為、コダーイシステムより「Lo ロ」を用いる。
*4 トニック・ソルファ法では"Ti"であり、読み方は「ティ tea」となるが、日本式階名の「シ」をそのまま用いる。
wikipedia;音階
wikipedia;階名



参考文献

退け、暗き影「固定ド」よ!―ソルミゼーション研究/東川清一(音楽の友社)
移動ドのすすめ―正しい読譜法と視唱指導/東川清一(音楽の友社)
ニューグローヴ世界音楽大事典(Macmillan)
音楽大事典(平凡社)
Collection of Musicals Lyrics and Libretti
Wikinfo | Solfege
楽譜の読み書き修得方法(相対音感による視唱, ソルフェージュ)
SMLの音楽科教育(PDF.168k)
さあ、うたいましょう






さて、余談ついでにおまけと言ってはなんなのですが他の国での「ドレミの歌」の歌詞も探してみました。
機械翻訳にてかなり強引に訳している(特にロシア語!)のですが、お察しください。

(イタリア語 Italian ver.)
DO se do qualcosa a te
RE è il re che c'era un dÌ
MI è il mi per dire a me
FA la nota dopo il MI
SOL è il sole in fronte a me
LA se proprio non è qua
SI se non ti dico no
e cosÌ ritorno al DO
(訳詞 Italian-Japanese)
DO - 君になにかをあげるなら
RE - 昔いた王様
MI - 私に教えてくれている
FA - ミの次の音
SOL - 太陽は私の目の前にある
LA - こっちでないなら
SI - あなたはいいえと言わないなら
さあこれでドに戻って実行

(フランス語 French ver.)
Do le do , il a bon dos
Ré rayon de soleil d'or
Mi c'est la moitié d'un tout
Fa c'est facile à chanter
Sol la terre où nous marchons
La l'endroit où nous allons
Si siffler comme un pinson
et nous revenons à do
(訳詞 French-Japanese)
Do - それはまだ良いです
Re - 黄金の太陽光線
Mi - それは全体の半分である
Fa - それは歌いやすいのです
Sol- 我々は歩いて地球の地面
La - 私達が行く場所
Si - ヒバリのように口笛を吹くため
そして私達はDo に戻る

(スペイン語 Spanish ver.)
Do hubo un gran Señor
Re un rey muy cantador
Si su amor es para mí
Fa es fácil recordar
Sol que brilla y da calor
La si cantas tra la la
Si es una afirmación
Y volvamos con el Do
(訳詞 Spanish-Japanese)
偉大な神があった
歌手王
私のためにあなたの愛
覚えやすい
それは光って温まる
あなたはTRA LA LAを歌っている場合
文です
とバックとは

(トルコ語 Turkish ver.)
Do bir küllah dondorma
Re masmavi bir dere
Mi denizde bir gemi
Fa denizde bir tayfa
Sol papatyalı bir yol
La yağmurdan bir damla
Si ilknurun kedisi
Do bir küllah dondorma


(訳詞 Turkish-Japanese)
ドは 1カップの アイスクリーム
レは 真っ青な 1つの 渓流
ミは 海に 1隻の 船
ファは 海に 1人の 船員
ソは 夏白菊の咲く 1本の道
ラは 雨から 一滴のしずく
シは イルクヌル(*)の 猫
ドは 1カップの アイスクリーム

*トルコの女性の名前

(オランダ語 Dutch ver.)
Do: begin en stop je mee
Re van repen chocola
Mi zijn noedels in Chinees
Fa: je vader is een held
Sol, de Spaanse zon aan zee
"La", dat zing je soms maar zacht
"Ti": het Engelse woord voor 'thee'
En meteen terug naar do-o-o-o
(訳詞 Dutch-Japanese)
あなたとの開始および停止
チョコレートバーの
中国での彼の麺
あなたのお父さんはヒーローです
海の上にスペイン語日
あなたが時々あるが、ソフトに歌うこと
「お茶」のための英語の単語
そしてすぐに戻ってやる-O-O-Oに

(ロシア語 Russian ver.)
До - мой домик на горе.
Ре - играем во дворе.
Ми - зовут меня Мими.
Фа - шагает вслед за ми.
Соль - забыть никак нельзя.
Ля - ля-ля споём, друзья.
Си - сирень несите в дом.
И опять вернёмся к до,
(訳詞 Russian-Japanese)
To- 山に私の小さな家
Re- 私たちは庭で遊ぶ
Mie - 私の名前はミミです
Fa - それはmiに続く階段
Salt- 全く忘れられない
Lya - LA-LAは、友人を歌う
SI - ライラックを、家の中に運ぶ
さぁそして再び、戻って前に


どなたか正確な日本語訳を教えて下さい (^_^;;

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